屋内の微細な気流(風の強さや向き)をリアルタイムに可視化するシステム - AEROVISION(エアロビジョン)を開発、公開しました。また本システムをオリジナルハードウェアコンテストGUGEN2023に応募しています。
オリジナルハードウェアコンテストGUGENでは「ほしいな」ボタンのクリック数などをもとに審査が行われることになっていますので、
このシステムを「いいな」と思った方はぜひ「ほしいね」ボタンをクリックしていただけるとありがたいです!
Index
システムの目的
本システムのコア技術となる超音波風速計は2021年末から本格的に開発を開始し、2022年後半にはオンラインでの販売を開始しました。
しかし「風をはかる」という領域は、計測分野の中でもさらにニッチであることに加えて、
従来の風速計のように可動部のない超音波風速計の特長や価値を、単体のハードウェアのみで効果的に伝えることには限界を感じていました。
多くの方に向けて「超音波風速計とは果たしてどういうものなのか」、「従来のものと比べてどれくらいすごい」のかを理解していただくためには、
直感的かつ、社会課題解決に資すると感じていただけるような、ひとかたまりの「システム」や「ビジュアライゼーション」が必要不可欠なのではないかという結論に至りました。
これらの背景を基に、超音波風速計の特長を最大限に発揮でき、なおかつ現下の社会課題に対応したテーマということで「空間気流をリアルタイムに可視化するシステム」としてAEROVISIONを構築することになりました。
システムの概要
AEROVISIONは9つのULSA M5B 超音波風速計と、気流をビジュアライズ表示するPCから構成されるシステムです。
気流計測
気流計測にはストラトビジョンが開発したULSA M5B超音波風速計を使用しており、従来の風速計ではとらえることのできない微気流計測を可能にしています。
加えて、ULSA M5Bは筐体上部にIoTモジュール「M5Stack Core2」を直接スタッキングすることができ、バッテリー電源とワイヤレス通信機能の提供により、各計測ポイントにてスタンドローンで動作することができます。ワイヤレス通信方式には2.4GHzのESP-NOWを採用し、風向・風速・音響温度※などを毎秒10回という高頻度で送信します。これにより急峻な気流の変化にも高速に応答することができます。
※音速から求められる温度。従来温度計は温度検出に時間を要しますが、超音波計測では瞬間的に温度を計測することができます。
AEROVISION コンソール(PC)
9つのULSA M5B超音波風速計から送信されたデータは、PCにUSB接続したESP-NOW受信用のM5Stack Core2を経由して取得されます。
アプリケーションの実装にはブラウザ上で動作するp5.jsを使用し、ESP-NOW受信用のM5Stack Core2とはWeb Serial APIを経由して接続することにより、クロスプラットフォームで動作することができます。
各ポイントで得られた風向、風速値は流線とグラデーションで描画されますが、ポイント間の風向風速について数学的に線形補間※を行うことで滑らかな描画を実現しています。各ポイントの計測実測値のほか、画面上をマウスオーバーすることで補間された風向風速をラベル表示することができます。
※ナビエ–ストークス方程式などを使用して流体計算やシミュレーションを行っているわけではありません。
描画処理にはハイパフォーマンスを要求するためゲーミングノートPC(デモ映像PCのGPU: NVIDIA RTX3050 laptop)などのハイスペックPCを使用する必要があります※。
※描画を最適化することにより、一般的なスペックのPC上でも動作させることは可能。
期待されるアプリケーション
AEROVISIONは超音波風速計ULSAのデモンストレーションであり、現時点で製品としての販売を計画しておりませんが、主に以下のような場面で活用ができると考えています。
- 人の集まる空間での換気設計: 病院・学校・オフィスなど
- 産業施設における活用 : 工場・クリーンルーム・ハウス栽培など
対象とする空間の構造やモニタリング対象の気流スケールなどによって求められる性能が大きく変わってくるので、
一概にAEROVISIONがすべての場面において有効とは限らないのですが、
特に空間全体の気流トレンドをリアルタイムで把握したい場合などで有効と考えています。
スペックを体感していただける例として、人肌は非常にかすかな風の変化でも感知することができますが、その風向きまで正確に感じとることは通常困難です。AEROVISIONはそのような人肌で感じる限界のレベルの微かな気流でも検出することができます。
さいごに
このたび超音波風速計の可能性を感じていただくためにAEROVISIONを開発しました。
現時点ではプロトタイプとしての位置づけのため実証実験等は行っておりませんが、
今後は展示会出展も予定しておりますので、みなさまからの反響やフィードバックをいただきながら活用方法等についても考えていければと思っています。