超音波風速計ULSA、発表1年で出荷100台を達成。

STRATOVISIONが独自に開発を行った「超音波風速計ULSA(アルサ)」をTwitter上で発表してから、今日で一年が経過しました。(オンライン販売開始は昨年12月~)

そしておかげさまで、この一年という節目でULSAの累計出荷台数は100台を数えることになりました

ULSAの誕生を振り返る

ULSAはもともと、STRATOVISIONが目指す「滑空回収型気球観測システム」の技術開発過程において、「高性能かつコンパクトな機上対気速度計」の実現に向かっていた中で誕生しました。

それまでの超音波式風向風速計は、ほとんどが産業用途や研究目的で使用される高度な計測装置であり、一般的にはそもそも入手が難しい上に、価格的にも高価、そしてサイズも比較的大きくずっしり重たいというもので、小型の無人気球搭載ペイロードとして到底搭載できるものではなく、自らで開発する他に選択肢がありませんでした。

産業用3次元超音波風速計
by Daderot (CC0, via Wikimedia Commons)

気球用の対気速度計として開発を開始したのは2018年末からでしたが、超音波風速計自体の技術的な難易度が高い上に、さらにそれをコンパクトにするという高い目標を掲げていたために開発は難航しました。

原理試作の様子(2019年)

しかしそのような困難な開発の中でも、だんだんと試作機の性能が見えてくるに連れて、超音波風速計の計測性能には従来の機械式風速計と異なる、目を見張る圧倒的なアドバンテージがあることを実感しました。

そして、もし従来よりも低価格かつコンパクトな超音波風速計をつくることができれば、気球搭載用途にとどまらない広い分野でのニーズがあると確信し、2021年末よりULSAとしての本格的な開発を行うことになりました。

自作風洞の建造(2021年)
1次試作品が完成(2022年)
2次試作品で現在のULSAに近いサイズに(2022年)
Maker Faire Tokyo 2022でULSA実機初展示(2022年)

このような経緯と長い開発期間を経てULSAは誕生しました。

ULSAを通じた気球開発資金の捻出

ULSAは高速域の風速計測や防水機能を省くことで、低コストかつコンパクトな超音波風速計に仕上がっていますが、実は基本的な計測性能自体は、より高価格帯の機種に十分に比肩する性能を有しています。
単に低コストでコンパクトな風速計というだけでなく、幅広いニーズに実用的に答えられるものとなっています。

このように一定の競争力のある風速計を開発、製造、販売させていただくことによって、気球技術の開発資金を捻出できるのではないかと考えました。

気球に関する技術開発はその規模と難易度から長期の開発期間と多くの資金を必要とします。

さらに社会的にその利用価値が見出されるまでには一定の期間を要すると想定されるため、その間を支える他の柱が必要となります。そのような未踏的な挑戦を地に足の付いた形で行っていくには、気球に強く関連し、さらにそれよって相互に技術開発がモチベートされるような技術を用いて「持続的な形で開発資金を得る事」が重要という考えに至りました。(先に述べたように気球にとって超音波風速計は対気速度を得るための必須の技術になります)

気球開発は実験環境を整えるだけでも一苦労

クラウドファンディングによる一時的な資金調達や、事業計画やアイデア・コンセプトに投資をいただくようなデット、エクイティによる資金調達を最初のステップとして考えるのではなく、「ものをつくって生きていく以上は」まずはどんなに小規模でも、自力で皆さまの役に立つ製品を開発して、支持を得、売上を上げてみることから歩み始めることが欠かせない経験になるのではないかと考えたのでした。

気球の事業化は、超音波風速計の構築よりも、(気球の取り組みは13年前に開始)もっとずっと難しいでしょう。そういう意味でも超音波風速計を製品化できるかどうかは気球開発の試金石となるものでもあったわけです。

そのような自分にとっては大きく無謀な挑戦をスタートして一年が経ち、結果的にULSAシリーズの累計出荷台数は100台を数えることができました。

ULSAの販売は委託販売を中心としているため、実際にどのようなお客様にご利用をいただいているのかをすべて把握することはできませんが、
これまでに、

  • 大手メーカー
  • 気流、換気システム等を専門とする企業
  • 海外電子機器サプライヤー
  • 研究機関
  • 大学
  • 高専
  • 個人

といった、法人をメインとするお客様にご利用をいただいております。

また幸いにも本日までに、ULSAシリーズに関するトラブル報告やクレームはいただいておりません。ULSAを買ってみてよかったなと思っていただけるように今後も安定した品質での出荷に努めてまいる所存です。

一方で、カスタマイズ製の高いULSA M5Bに関してはM5Stackソフトウェアの導入に関するお問い合わせをいただくことがあり、少々分かりづらいところもあるようです。今後はよりユーザーフレンドリーなガイドやマニュアルの整備、ソフトウェアの拡充を行い、皆さまにより楽しく便利にULSAをご活用いただけるように日々進化していきたいと考えております。

今回の記事ではULSA発表から1年というタイミングで、振り返りをさせていただきました。
みなさまには、あらためてULSAを通じて格別のご支援を賜り感謝を申し上げます。そして今後もSTRATOVISIONの活動にご注目とお力添えをいただけますと幸いです。

STRATOVISION 代表 河野 紘基


ULSAは株式会社スイッチサイエンス様のマーケットプレイスよりご購入が可能です。

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